バドワイザーと一人っ子
バドワイザーのTシャツが流行った、流行った。
みんな着てたもん。小学生も中学生も、大人もね。
そんなバドワイザーが流行っていた夏のある日。
私は小学校6年生で、お友達の家で遊んでいました。(女子ね)
その子は秀才で、毎日塾通いをしていてあんまり遊んだことなかった。
団地の家には誰もいなくって、私はその子がパソコンで作っている
小説を見せてもらい、キャッキャしていた。
(今から30年ちかく前なのでパソコン珍しくない?)
「私も小説作らせて~」
お願いして、頑張って作っていたらあっという間に6時になってしまい
私は泣く泣く帰ることにした。
「途中まで送るよ」
ふたりで小説についておしゃべりしながら歩いていたら
その子が自動販売機で「のど乾いたから」とビールを買った。
「飲む?美味しいよ」
私は首を横に振ったけど、見ていると彼女は一気に飲み干して
「あー、美味しかった!」と空き缶をポイッと川に捨てたのだ。
それは、やせ我慢でもなくとても自然だった。
私はぼんやりと、彼女の部屋を思い浮かべた。
いろんな上等なものがあり、いろんな物を持っていた。
でも6時を過ぎても誰も帰ってこない部屋は暗くて静かだった。
彼女は一人っ子だった。(あんまり周りにいない)
「小説さ、(私)が多いからもっと減らしたほうがいいよ。」
彼女がアドバイスしてくれた。
そんな彼女はレベルの高い私立中学へ合格して、
もう二度と会うことはありませんでした。
彼女が飲んだビールはバドワイザー。
ああ、バドワイザー。
あの夏の日を思い出す、、、