曲がった指とクッキー
家は母子家庭で、母は夜にスナックに働きに出ていた。
だからいつも夜は姉と二人だけでした。
母の誕生日か何かでトースターを使ってクッキーを作ったんだけど
このクッキーがすごく美味しかったこと覚えてる。
そんなある日わたしは
(そうだ、えんぴつを削ろう!彫刻刀でさぁ)
と考え彫刻刀を探したら、似たものが引き出しから出てきたので
さっそく削ってみた。
そしたら指を切ってしまった。
でも、切ったどころの深さではなく人差し指の第一関節あたりが
ぶらーんとぶらさがっており。
母は慌てて、割りばしをあてがって包帯か何かで巻いたのだ。
たぶん。
病院は行っていない。
だって、今も指は曲がったまんまつながっているのだから。
あの幽霊屋敷のような家での思い出は数多くある。
すべて、普通じゃない思い出だね。
そうそう。
彫刻刀に似ているものとして使ったのはカミソリだったよ。
昔のカミソリは安全ガードがついてなかった。ピンク色。
おそろしや~。
病院に行かない母よ。